経験を商品にするには、まず経験を「時系列」「できること」「失敗と学び」の3つの視点で書き出し、そこから他人が困っていそうなものを選びます。特別な実績がなくても、手順を踏めば商品の材料は見つかります。
棚卸しは、頭の中の経験を紙の上に並べる作業です。並べてみると、自分では当たり前だと思っていた内容に価値があることに気づけます。
時系列で、これまでの経験を書き出す
最初は、学生時代から今までの経験を、年表の形で書きます。仕事、副業、趣味、家庭、引っ越し、病気、資格の勉強など、ジャンルは問いません。
書くときは、「何をしたか」だけでなく「何を調べたか」「誰に聞いたか」「どれくらい時間がかかったか」も添えます。具体的な数字や期間は、あとで商品の中身を作るときに役立ちます。
この段階で選別はしません。小さなことも全部書き出すのがコツです。20個から30個ほど集まれば、材料としては十分です。
「できること」を行動の言葉で整理する
次に、年表を見ながら「自分ができること」を行動の言葉で書き直します。「事務をしていた」ではなく、「請求書を月100件ほど処理する手順を作った」のように、具体的な動作にします。
行動の言葉にすると、他人に教えられる形が見えてきます。「報告書を短時間でまとめる」「引っ越し費用を抑える手順を組む」「毎朝の運動を3か月続けた」など、小さな成功体験も立派な材料です。
できることを書き出したら、それぞれに「どれくらいの期間、続けたか」も付けておきます。続けた期間が長い分野ほど、教える内容に厚みが出ます。
失敗と学びも、貴重な材料になる
成功談だけでなく、失敗した経験も棚卸しの対象です。失敗は、読み手が同じ道に進んだときに避けられる、有益な情報になります。
書き方は、「何をして、何がうまくいかず、どう直したか」の3点です。たとえば「動画を撮ったが音が小さくて使えなかったので、マイクの位置を見直した」のような内容です。
ここで注意したいのは、他人の個人情報や会社の内部情報を含めないことです。勤め先で知った機密、顧客の名前、同僚の失敗談などは、書いても商品にしてはいけません。あくまで自分の行動と、そこから得た一般化できる学びだけを使います。
商品にできるものとできないものを分ける
書き出した材料を、次の3つの基準で仕分けます。
- 他人が「知りたい」と思うか
- 自分が教えるのを苦にしないか
- 機密や権利の問題がないか
3つとも当てはまれば、商品の候補です。1つでも外れたら、いったん保留にします。
また、法律、医療、税金のように、間違えると相手に損害が出る分野は、自分の経験だけで断定的に教えるのは避けます。経験談として書くにとどめ、「詳しくは専門家に確認してください」と添えます。
候補を一文にまとめて確かめる
残った候補を、「〇〇した経験をもとに、△△な人が□□できるようになる手順」という一文にします。この一文が自然に書けるものは、商品として形になりやすいです。
書けた一文を、友人や知人に見せます。「それ知りたい」「私も困ってた」と言われたら、有力な候補です。反応が薄かったら、対象を変えるか、切り口を言い換えます。
反応を聞くときは、「買いますか」ではなく「いま困っていますか」と尋ねるほうが、本音が出やすくなります。
棚卸しが進まないときの工夫
書き出しの途中で手が止まるのは、よくあることです。そのときは、次の質問を自分に投げてみてください。
- 最近、人にお礼を言われたことは何か
- 時間を忘れて取り組んだことは何か
- 人より早く終わらせられる作業は何か
- 友人や家族に、よく頼まれることは何か
これらの答えは、自分では特別と思わないことが多いのに、他の人にとっては助かる能力だったりします。1つでも思い出せたら、そこから詳しく書き出します。
また、過去のメールやメモ、写真、SNSの投稿を見返すのも有効です。記憶に残っていなかった経験が、記録から出てくることがあります。仕事の記録を見返す場合は、会社の情報を持ち出さないように気をつけ、自分が個人として行った工夫や学びだけを拾います。
棚卸しを商品の形につなげる
材料が集まったら、1つの経験を「手順」に直せるかを考えます。手順にできるものは、動画講座、電子書籍、テンプレートのどれにも発展させやすいです。たとえば「家計簿を3か月続けた」経験なら、続けるためのルールと、使った記録表が商品の骨組みになります。
手順にしにくい経験は、読み物や体験記の形にできます。ただし、体験記だけで有料にするには、読み手が真似できる学びや、役立つ情報を足す必要があります。
棚卸しの結果は、ひとつのファイルにまとめて保存しておきます。次の商品を考えるとき、また一から思い出す必要がなくなり、企画の速度が上がります。
経験が少ないと感じる人へ
「まだ経験が浅いから、商品にならない」と考える人もいます。ただ、教える側に必要なのは、相手より少し先に進んでいることです。1年前の自分を相手にするなら、半年の経験でも十分に役立ちます。
経験が浅いと感じる場合は、「学びながら作る」方法もあります。調べたことを整理し、実際に試して、うまくいった手順だけを残します。この過程自体が商品の中身になります。その際は、「調べて試した記録」であることを正直に書き、専門家の意見のように見せないことが信頼につながります。
また、経験が足りない部分は、公的機関の資料や公式の説明を参考にし、出典を明記します。自分の体験と、確かな情報源を組み合わせることで、中身に厚みが出ます。
棚卸しは、1人で抱え込むより、誰かと話しながら進めると速くなります。友人に聞き役になってもらい、「それってどうやったの」「何が大変だった」と質問してもらうと、自分では言葉にしていなかった工夫が出てきます。話した内容は、その場でメモや録音(相手の了承を得て)に残しておきます。
また、棚卸しは年に1度くらい見直すと、新しい強みに気づけます。経験は時間とともに増えるため、前回は商品にならなかった内容が、今回は十分な材料になっていることもあります。
棚卸しの結果は、商品だけでなく、発信の題材にも使えます。書き出した経験をもとに、SNSやブログで小さく発信すると、反応から需要を確かめられます。
次にやること
今日は、30分でかまわないので、年表を作ってみてください。書き終えたら、その中から「人に何度か聞かれたこと」に丸をつけます。
丸が付いた項目が、最初の商品の有力候補です。次の週には、その候補について、同じ悩みを持つ人が実際にいるかを調べる段階に進みます。棚卸しは一度で完璧にする必要はなく、新しい経験を積むたびに書き足していけば、商品の材料は増え続けます。




