AIは、電子書籍の目次案づくりや、下書きの叩き台に使えます。ただし、AIが出した文章をそのまま売るのではなく、事実の確認と、自分の経験を加える作業が欠かせません。AIは下書きを速くする道具で、中身の責任は書く人にあります。
ここでは、使いどころ、指示の出し方、確認すべき点、そして独自性の出し方を紹介します。
AIを使うのに向いている作業
AIが得意なのは、材料を整理したり、案を出したりする作業です。電子書籍づくりでは、次のような場面で役立ちます。
- 目次案を複数出してもらい、比べる
- 読者の悩みを、いくつかの切り口で整理する
- 下書きの叩き台を作ってもらい、手直しする
- 長い文章の要点をまとめる、言い回しを整える
手作業で数時間かかる構成の検討が、数十分に縮まることがあります。一方で、AIに「この本を書いて」と丸投げすると、一般的で当たり障りのない内容になりがちです。
指示の出し方で、出力が変わる
AIには、次の情報を伝えると、役立つ答えが返ってきやすくなります。
- 読者(誰に向けた本か、どんな状況か)
- 目的(読み終えた人にどうなってほしいか)
- 分量と形式(章の数、1章の字数、箇条書きの有無)
- 避けたいこと(誇張した表現、作り話、専門用語の多用)
たとえば「会社員が副業を選ぶための手引き、5章構成、各章に小見出し3つ」のように具体的に頼みます。出てきた案が合わなければ、「もっと初心者向けに」「手順を中心に」と、追加の指示を重ねます。
一度で完璧な答えを求めず、何度かやり取りして、自分の考えに近づけていきます。
事実の確認は、自分でする
AIは、もっともらしい間違いを出すことがあります。存在しない制度名、古い情報、出典のない数字などが混ざる場合があります。
販売する本では、次の点を自分で確認します。
- 数字や統計は、公的機関や公式の発表で裏を取る
- 制度や法律の話は、最新の公式情報で確かめる
- ツールの機能や料金は、公式サイトで確かめ、「執筆時点」と断る
- 固有名詞(人名、会社名、書名)の綴りや実在を確かめる
確認できなかった内容は、削るか、断定を避けた書き方に直します。法律や税金、医療に関わる部分は、一般論にとどめ、専門家への相談をすすめる一文を添えます。
自分の経験で、独自の中身にする
AIが出した文章は、同じ質問をした他の人にも似た内容が出ることがあります。そのまま売ると、他の本と区別がつかなくなります。
独自性を出すには、AIが持っていない情報を足します。
- 自分が実際に試した手順と、その過程の気づき
- 自分が作った表やチェックリスト
- 自分の言葉で書いた、判断の基準や選び方
- 読者を具体的に思い描いて選んだ、順番や取捨選択
AIの文章は材料として使い、全体を読み返して、自分の言葉に書き換えます。書き換える過程で、考えが整理され、本の質も上がります。
利用規約と権利を確認する
AIで作った文章を商品として販売できるかどうかは、使うサービスの利用規約で決まります。商用利用の可否、出力の権利の扱い、禁止されている使い方は、サービスごとに異なり、変更されることもあります。
販売する前に、使っているサービスの最新の規約を読んでください。また、販売する場所(電子書籍のストアや販売サービス)に、AIの利用に関するルールがある場合もあるので、そちらも確認します。
AIが出力した文章が、既存の作品と似てしまう可能性もゼロではありません。気になる箇所は、検索して似た文章がないかを確かめます。他人の文章を無断で使うことは、著作権の問題につながります。
AIとの分担の目安
作業をAIに任せる部分と、自分でやる部分を分けておくと、迷いません。目安は次のとおりです。
| 作業 | 分担 |
|---|---|
| 目次案の洗い出し | AIに案を出してもらう |
| 読者と目的の決定 | 自分で決める |
| 下書きの叩き台 | AIに頼み、手直しする |
| 事実の確認 | 自分でする |
| 体験や考えの追加 | 自分で書く |
| 誤字の確認 | AIと自分の両方で見る |
この分担を守ると、時間を節約しながら、内容の責任を自分で持てます。
指示文を育てていく
最初に出てきた文章が気に入らなくても、あきらめる必要はありません。指示文を少しずつ直しながら、何度か試します。「文を短くして」「専門用語を減らして」「中学生にも分かる言葉で」「箇条書きを増やして」など、直したい点を一つずつ伝えると、出力が近づいていきます。
うまくいった指示文は、メモに残して、次の章でも使い回します。章ごとにゼロから考え直すより、同じ型の指示文を使うほうが、文体が揃いやすくなります。ただし、AI特有の言い回し(同じ書き出しの繰り返し、まとめ口調など)が残りやすいので、読み返して、自分の言葉に直す作業は欠かせません。
避けたい使い方
次のような使い方は、後でトラブルのもとになります。
- 他人の本や記事を丸ごと入力して、言い換えさせる
- 実在しない体験談や口コミ、数字を作らせて載せる
- 確かめていない事実を、そのまま断定で書く
- 同じ内容の本を大量に作って売る
特に、存在しない「利用者の声」や「調査結果」を作ることは、読者をだます行為になります。事例を入れたい場合は、「例として作ったもの」と明記するか、自分が実際に試した内容だけを書きます。
AIで作ったことの開示について
AIをどこまで使ったかを、読者に伝えるかどうかは、販売する場所のルールや、自分の考え方によります。販売する場所が開示を求めている場合は、従います。求められていなくても、AIを下書きに使ったことを正直に書いておくと、信頼を損なうリスクを減らせます。
また、AIに入力する内容にも注意します。他人の個人情報や、守秘義務のある情報、未公開の資料を入力するのは避けてください。
最後に、AIの性能や使えるサービスは、短い期間で変わっていきます。この記事に書いた使い方は、考え方の土台として読み、具体的な機能は、使う時点の公式の説明で確かめてください。どのサービスを使う場合でも、最終的に読者へ届けるのは自分の名前で出す文章です。内容に責任を持ち、確かめられたことだけを書く姿勢を、いちばん大切にしてください。
この手順を一度やっておけば、次の本からは、さらに短い時間で下書きに進めます。
次にやること
今日は、AIに「読者」「目的」「章の数」を伝えて、目次案を3パターン出してもらってください。出てきた案を比べ、自分の考えに合う章を選んで、組み合わせます。
次に、1つの章だけ、AIに下書きを書いてもらいます。その文章を、事実の確認と、自分の経験の書き足しで直します。この1章を仕上げる作業で、どこまでAIに任せられるか、どこから自分で書くべきかの感覚がつかめます。その感覚をもとに、残りの章の進め方を決めます。




